1. レッドビーシュリンプの起源
レッドビーシュリンプ(Neocaridina sp.)は、元々日本で作出されたクリスタルレッドシュリンプ(CRS)が元になった品種です。
1990年代初頭、寿司屋さんでもあった日本のアクアリウム愛好者の元で飼われていた元祖ビーシュリンプ(香港ビーシュリンプ)のなかに、透明な体に鮮やかな赤い色彩模様を持つ突然変異種であるビーシュリンプが産まれ、これを品種固定してクリスタルレッドシュリンプと名付けたのが始まりです。
この作出者がクリスタルレッドシュリンプ養殖業を始めて、クリスタルレッドシュリンプの名称を商標登録したため、他の業者はクリスタルレッドシュリンプの名称を使えなくなったことから、レッドビーシュリンプという名称を使うこととして広まり、それが今は定着しているのです。
その後、この美しいエビは世界中に広がり、レッドビーシュリンプとして親しまれています。
今回のお話は、黒ビーシュリンプも同様のことなので参考にしてください。
2. レッドビーシュリンプの飼育ガイド
2.1 水質と環境
底砂:ビーシュリンプ飼育の際の底砂としては、ソイルは絶対といっていいくらいのものです。他の種類の底砂でも飼育・繁殖はできますが、確実に差があります。しかも、ソイルであれば何でも良いというわけではなく、実績のあるソイルは決まっています。しかし、新しくご自分で別な適したソイルを見つけるのも1つの楽しみかもしれません。
水温:23℃位が最適で、安定した温度を保つことが重要です。27℃から上はいつ死んでもおかしくない水温なので、27℃にならないよう気をつけましょう。最低水温については、私個人で確認できた範囲で言うと、10~15℃の間まで水温低下しても大丈夫なことがわかっています。
水質:定期的な水換えと水質検査を行い、清澄な水を維持します。シュリンプ雑誌で全国アンケートをとったところ、週に2回の水換えが平均だったように記憶しています。私は週に1回の水換えが基本で、1回の水換え量は全体の半分程度です。水換えに使う原水の水質のよって、水換え頻度や量を考慮します。
最適な水質を作るために、各カルキ抜きや毒物除去剤から、目的に合ったものを選びましょう。
最強濾過バクテリアや、最強PSBなども以下のリンクから関連記事をご覧ください。
pHレベル:中性前後で問題ありません。極端な高pHや低pHでも慣れている個体は死にませんが、水単体で考えると安全度が高いのは弱酸性の水なので、ph6.5~6.8位が良いです。個体が慣れてくれる面もあるので、日にちをかけてゆっくりと水換えに慣らすと良いです。それが結果的にpH値にも慣れることになります。
水槽のサイズと設置: 適切な水槽のサイズと設置方法についても注意が必要です。最低でも一般的な30㎝水槽(10ℓ±)以上の大きさの水槽をおすすめします。これより小さいと、上手く飼育繁殖するのが難しいです。水槽設置場所が高い位置だと水温が温まりやすく、設置場所が低い場所だと水温が冷えやすいという特徴があるので、ビーシュリンプの適水温を考慮して水槽設置場所を決めましょう。
水槽内のフィルターシステム: 効果的なフィルターシステムの選択と管理が重要です。 フィルターの種類は何を使っても飼育・繁殖できます。当初は1つの水槽に外部式フィルターを2台設置するような過剰な濾過が一般的でしたが、現在ではスポンジフィルターのみで管理するやり方でも可能なことはわかています。お住まいの地域の水と、フィルターの種類によって、水換え頻度・量など最適解を見つけてください。吸い込み口があるフィルターには、吸い込み口にスポンジを付けて、エビが吸い込まれないようにするのも絶対に必要です。
照明:エビ飼育は、簡単な水草水槽を維持管理する感覚でできることなので、照明時間も8時間前後の照射が適しています。照射時間が長すぎるとコケが発生する原因になります。ガラス面に発生するコケ程度であれば、エビの餌にもなるのでかまわないのですが、水草にコケが発生すると水草自体を捨てなければならなくなったりするので気をつけましょう。
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2.2 エサと栄養
バランスの取れた食事:専用のエビフードが基本になります。水槽環境ができていると、植物性プランクトンや動物性プランクトンも湧いてくれますが、あまりにミジンコが多い環境だと、水換え不足などの原因も相まって富栄養化が起きているケースもあるので、ミジンコがいれば良いというわけでもありません。
適量の給餌: 過剰な給餌は水質を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。基本的には週に2回程度の給餌でかまいません。毎日給餌する場合は、餌の適量を確実に間違わないでください。エビ飼育で失敗する原因の1つに、残り餌による水質悪化があります。1つの水槽に大量のエビがいる場合は、毎日のように給餌しますが、そのぶんの水換え頻度も考慮しましょう。
エビの健康チェックポイント:健康なエビは、常に手を動かしてツマツマする行動をとっています。この行動が無くても正常なケースというのは、小粒状の餌を手に持って食べている時、脱皮の前後、などです。これ以外の時にエビの動きが鈍い場合と、体色に白濁りが入っているように見える場合は、体調不良である可能性が高いです。
疾病予防と治療法:エビの場合は、エビ自体が小さいため異変に気がつきにくく、気づいた時には手遅れであるパターンが多いのと、ただでさえ魚より弱いエビに魚病薬を使っても大丈夫なのかということなどがあり、実際はお手上げみたいなものです。普段から殺菌作用の高いヤシャブシの実を使用するなどして、予防に努めましょう。エビも意外と塩や魚病薬を使っても死ななかったりするので、ダメ元でどうしてもという場合は規定量より少なくして使用してみるのはありです。
2.3 隠れ家と植物
適切な環境:植物や隠れ家を配置し、エビたちが安心して過ごせるように整えます。隠れ家としては、竹炭の筒状の物もあれば陶器でできた筒状やジャングル状の物などがあります。植物は、ウィローモスさえ入れておけば大丈夫ですが、自分の気に入った水草を自由にレイアウトしてかまいません。なかにはウォーターウィステリアや、それに似た水草などはエビの食害にあいやすいものもありますし、水草の根元についている肥料や農薬の処理をしないとエビが死んでしまうことにもなるので、この点は気をつけてください。
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3. レッドビーシュリンプの繁殖
高い繁殖力:適切な環境下では容易に繁殖し、稚エビは親譲りの特徴を受け継ぎます。数ヶ月経過しても繁殖しないという場合は、飼育スタートするエビの数が少なくないか、環境や管理法は適切か見直しましょう。最低10匹以上の飼育スタートであれば、よほど運が悪くない限り雌雄がそろいます。単価が高くなったりしますが、初めから性別が判明している個体を選ぶやり方もあります。
稚エビが育たない場合:通常は適切な環境ができていれば、何もしなくても産まれた稚エビは育ちます。1つの水槽で親エビの飼育から抱卵、稚エビの誕生から育成までできるのです。ただし、適切な環境ができていない場合、親エビのお腹から脱卵したり、稚エビは産まれるのに育たずに死ぬ現象が起こります。この場合は、ミネラル添加をしたり微細な稚エビ用フードを給餌すると、いくらか改善したりします。
遺伝:ビーシュリンプはバンドタイプが基本です。今回の話としてはそれますが、例えばシャドーシュリンプとビーシュリンプを交配した場合、これは掛け戻しになるのですが、産まれたF1であるそのシャドービーシュリンプ同士を交配して、次に産まれてくるF2のシャドーシュリンプは、パンダ(バンドタイプのシャドーシュリンプ)が多く産まれてきます。これは、ビーシュリンプというのはバンドタイプが本来の姿であるからです。これがビーシュリンプではなく、タイガーシュリンプで掛け戻しを行うと、タイガーシュリンプが持っているソリッド遺伝子の働きで、産まれてくるF2のシャドーシュリンプにはキングコング(ソリッドタイプ※ソリッドとは一面同じ色のこと)が多く産まれてきます。話をビーシュリンプに戻しますが、綺麗な雌はよく見かけるのですが、雄は少ないものです。綺麗な雄がいたら大切に繁殖に使いましょう。
立て直しは必要:グッピーなどがわかりやすいですが、エビも近親交配が続くと立て直しが必要になってきます。近親交配のせいで虚弱体質になってきたり、容姿が悪くなってきたりするからです。ビーシュリンプはまさしくグッピーと似ているのですが、寿命も1~2年程度、産まれた子供は3ヶ月で親になれるなど共通しているので、私はグッピーを参考に考えています。例えば一説ではグッピーの近親交配は9代程度が限界という話もあるので、月日に直して考えると2年以内に新しい血を交配させれば、とりあえずは大丈夫ということになります。
4.レッドビーシュリンプの模様の種類
元祖ビーシュリンプ(香港ビーシュリンプ):レッドビーシュリンプの大元になった原種で、バンドが不明瞭で、白い部分も透明がかっているのが特徴です。
クリスタルレッドシュリンプ(CRS):元祖ビーシュリンプから突然変異で産まれた、元祖ビーシュリンプの赤バージョンのような模様です。
バンド:ビーシュリンプの基本形で、お腹にズドンとバンドが入る模様です。
タイガーバンド:バンドからの改良で、横から見たお腹の模様が1本線だったり2本線だったっりします。
日の丸:背中が日の丸模様に見える模様です。
進入禁止:日の丸に白線が入って進入禁止マークに見える模様です。
モスラ:背中に一切の模様が無いのが特徴です。日の丸まではいかず、小さな点が残っている程度だと、ドットと呼ばれたりもします。
派手系モスラ、進化系モスラ:頭部の色がより少なく、全体的に白面積が占めるモスラです。
スノーホワイト:全身が白色に改良されたビーシュリンプです。
今までの模様に当てはまらない個体も作ることができます。
(※以下の個体も、純粋なビーシュリンプのみによる交配から産まれたもので、ハイブリッド種ではありません)
5. レッドビーシュリンプの混泳について
小型魚との相性: もし混泳させるなら、穏やかな小型魚と一緒に飼育することがおすすめです。小型魚の中でも更に小型の魚が適しています。具体的には、ボララス・マクラータや、ラスボラ・アクセルロディ・ネオンブルーなど、これらと同じような魚が混泳に適しています。
攻撃的な魚・大きな魚は避ける: 攻撃的な魚との混泳は避け、エビたちがストレスなく過ごせるようにします。たとえ口に入らないサイズ関係の魚でも、エビにちょっかいを出してくる魚だと、エビがいつも隠れて出てこなくなります。元々エビは魚にとって美味しい餌なので、基本的にはエビだけの水槽がおすすめです。
5. 飼育者向けのアドバイス
初心者向けのレッドビーシュリンプ飼育のコツを紹介します。
飼育スタート時のコツ:あとはエビを迎え入れるだけの環境にし、1ヶ月以上は水槽をまわしておきます。この1ヶ月の間に水草も水槽環境作りに役立ちますし、パイロットフィッシュがわりにラムズホーンなどの貝や、本命では無いエビ、例えばヤマトヌマエビやミナミヌマエビなどを飼うことで環境作りに役立ちます。仮に水槽の空回し期間をもうけない場合で、エビの飼育スタートが20匹以下の場合、餌は使わずにマジックリーフを餌がわりとして水槽に入れましょう。この状態で1ヶ月以上経過したらエビ用のフードを与えるようにします。
原水を理解する:ご自身が水換えに使う水の水質を測定して理解しましょう。例えばミネラルウォーターを水換えに使う場合も、普通に水道水をカルキ抜きして使う場合も、水道水にしても人間用の浄水器を通して使う場合も、沢水や地下水を使う場合もです。多くのかたは水道水をカルキ抜きして使うと思うのですが、その場合はその地域の水道水によって、飼い方が少し違ってきます。より軟水地域の場合は、そうじゃない地域の水に比べて飼育水が酸化しやすいので、水換え頻度が必要になりがちです。水質測定できるものは常備しておきたいところですね。
繁殖しなくなった場合:この場合、基本的には水換え頻度を増やしてみます。例えば1週間に1回、全体の半分の水換えをしていたなら、1週間に2回同じ量の水換えをしてみるとか、毎日全体の5分の1の水換えをしてみるとかです。またはミネラル添加剤を1ヶ月も使用すれば抱卵しやすいです。もしソイルが1年以上経過している場合はソイルの寿命の可能性があるので、ソイルのリセットが効果的です。リセットの場合はソイル交換のみにし、フィルター掃除はしないでください。
水温対策は絶対:エビの飼育で大敵は高水温です。夏場が一番危険なので、必要に応じた高水温対策をします。水温変化が大きくなるリスクがあるので、あまり良いとは言えませんが、凍らせたペットボトルを水槽に入れる方法もあります。基本は、水槽用扇風機を使って水面に風をあてる、部屋ごとクーラーで冷やす、水槽用クーラーを使用する、などです。ヒーターは熱帯魚用の26℃固定ヒーターは不向きです。ヒーターは、だいたいの商品は1.5℃±の誤差があるものなので、上に誤差が出た場合のことを考えると使いづらいです。できればサーモスタットで温度を自由に設定できるヒーターを使いましょう。温度固定ヒーターを使う場合は、エビ用の23℃固定ヒーターか、金魚用の18℃固定ヒーターがおすすめです。
まとめ
レッドビーシュリンプの飼育は、一度環境ができてしまえば、魚を飼育するより手間がかかりません。
産まれてから繁殖するまでのサイクルも、グッピー同様に早いです。
このようなことから、何か本命の魚飼育をしているかたの、合間の楽しみとしてもレッドビーシュリンプ飼育をおすすめします。
例えば、ディスカスは産まれてから成魚になるのに1~2年程度はかかるので、この間にレッドビーシュリンプの世代は何代も進めることができますし、そもそもエビは餌やりや水換え頻度が少なくても飼育できるため、本命の魚飼育の合間としてやることには苦にならないのです。
ぜひ、日本から世界に発信したエビである、レッドビーシュリンプの世界に足を踏み入れてください。
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