パラティラピア・ポレニー (Paratilapia polleni) は、アフリカ東海岸のインド洋に浮かぶ、日本の約1.6倍の面積を持つ世界第4位の大きさの島、マダガスカル共和国に分布する人気のシクリッドの一種です。
島に生息する動植物の約8割がマダガスカルのみに生息する固有種であるという、特異な生態系を持っています。
そんな特異な生態系のなかにある熱帯魚、パラティラピア・ポレニーもまた特異なものを持っています。
本記事では、パラティラピア・ポレニーの飼育方法、繁殖、混泳の注意点、そして病気対策について詳しく解説します。
パラティラピア・ポレニーの特徴
- 分布:マダガスカル島
- 最大全長:20~25cm±
稚魚期は白っぽい体色をしており、成長するにつれて灰色っぽい体色になっていき、大人になるにつれて黒い体色に青白いメタリックなスポット(点々)模様が散りばめられる超美種です。
鼻孔周辺が淡い黄色を呈し、黒い体色と青白いメタリックスポットと相まって、本当に宇宙空間をイメージさせます。
そのスポットの大きさや範囲にも個体差があり、コレクション性も意外とある魚です。
体型はやや寸詰まりで、体高がある形をしています。
メタリックスポットの大きさの違いによる個体差が見られ、 「ブレーケリィ」としているサイトもありますが、まだそのへんは不明な部分も多いとされています。
パラティラピア・ポレニーの飼育方法
水槽の準備
- サイズ: 最低でも60規格水槽からの飼育をおすすめしますが、できれば100リットル以上の水槽(60ワイド水槽)が必要です。成長に合わせて大きな水槽を用意しましょう。
- 水質: pHは中性からややアルカリ性(pH 7.0~8.0)が理想的です。水温は24~28℃に保ちます。当店では28℃で管理しています。
- レイアウト: 隠れ家となる岩や洞窟を設置し、自然環境に近いレイアウトが自然です。砂利や細かい砂を底材に使うと、より自然な環境を再現できます。
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餌
- パラティラピア・ポレニーは雑食性で、市販のドライフード、冷凍餌、をバランスよく与えます。植物質の餌も適量与えると健康維持に役立ちます。
パラティラピア・ポレニーの繁殖
繁殖の準備
- 繁殖期にはオスが縄張りを形成し、メスを誘うためのディスプレイ行動を行います。十分な隠れ家を提供し、繁殖に適した環境を整えることが大切です。
- 逆に、自然な環境ではなく、ベアタンクで管理重視にした環境での繁殖もできます。
- ペア形成に関しては、ポレニー複数と混泳したり、他の魚複数と混泳している方がペア形成が上手くいきやすいです。雌雄2匹だけでペアリングさせる場合は、オスにメスが殺されやすいので、セパレーターを常備し、少しでも危ないと思ったらその時に隔離しないと手遅れになるケースが多いので注意しましょう。場合によってはセパレーター越しでのお見合い期間をしばらくの間もうけ、頃合いを見計らって混泳させます。
- 卵の管理: メスは岩や他の硬い表面に卵を産みつけ、オスとメスが協力して卵と稚魚を守ります。親魚が卵を守る様子を観察できるのも魅力の一つです。
- 特徴的な卵:パラティアピア・ポレニーの卵は、シクリッドとしてはとても特徴的です。色はピンク色で、おそらく未受精卵の場合は白く変色します。基質に産卵するわりに、その卵は一般的なシクリッドの卵のようにくっつきません。それどころか一見すると卵塊状態に見えたりもし、まるでプレコの卵のようにも見えたりするのですが、水流になびく様子は卵塊とは違います。よく見るとメダカの卵のように、糸に卵が連なっているような感じにも見えます。親魚が卵を安全な場所に移動させるときは、優しく卵を噛んで引っ張ると、糸で連なって全ての卵をズルスルと移動させることができます。
稚魚の育成
- 稚魚は孵化後、親からの保護を受けつつ成長します。最初は生きたブラインシュリンプベビーなどを与え、成長に合わせて冷凍餌や市販の稚魚用フードに切り替えます。ちなみに、大きめになるシクリッドの稚魚は基本的に強健な種がほとんどなため、生きたブラインシュリンプベビーを使わないで、いきなり冷凍餌(冷凍ブラインシュリンプベビー、冷凍コペポーダ)や稚魚用ドライフード(パウダー状)で育成することも可能なので、ポレニーの稚魚もそれで育成はできるかもしれません。
- 親魚は稚魚を守りますが、ペアの仲が悪くなることがあるため、特にメスがオスに殺されてしまうパターンに注意しましょう。メスが傷つき始めたらオスを隔離して、子育てはメスに任せるようにします。様子次第ではオスに子育てを任せるパターンも他のシクリッドではあるので、そのパターンも頭に入れておきましょう。
- メスが単独で子育てをしていても、そのうちメスの体が傷つくようになってきます。観察していると、稚魚が親魚の体を突いているのがわかります。これは大きめのシクリッドの見られることで、稚魚の食欲の凄さがわかる出来事です。
- その後、稚魚が大きくなって幼魚になってくると、今度は幼魚が1~2日位の短いスパンで1~3匹死んでいるのを見かけるようになります。これも観察していると、親魚が子供を攻撃するようになっているのがわかります。これはシクリッドに見られる光景です。親魚の体が子供に食べられだした時点で親魚は隔離して、子供だけにした環境での飼育に切り替えるのが良いのですが、それをやらないでいるといずれ親魚が子供を攻撃するようになるので、最低でもこの段階で子供単独の飼育に切り替えないと、子供がいなくなっていくことになります。
- パラティラピア・ポレニーの子供は、最初のうちはしばらく白っぽい体色をしています。これがあの黒い体色になるのですから面白いものです。
- 気の荒いシクリッドの幼魚は、なるべく空腹時間が無いよう注意しましょう。空腹時間が長くなると仲間の目を食べることがあります。そうなると、仲間に目を食べられて視力を失い弱った幼魚は更に攻撃を受け、死んだあとお腹を食べられるパターンが多いです。
パラティラピア・ポレニーとの混泳の注意点
混泳相手の選定
- パラティラピア・ポレニーは攻撃的な性格を持つため、混泳には注意が必要です。特に小型の魚や大人しい魚との混泳は避けるべきです。とにかく、シクリッドの混泳や気の強い魚種の混泳はパワーバランスを取ることが全てと言っていいので、スペースに対して過密飼育をしたり、複数の水槽やセパレーターを使って、いつでも魚の移動をできる環境が理想です。
- 混泳可能な種: 同じくらいのサイズで、攻撃性のあるシクリッドやタフな魚種が混泳に適しています。混泳相手を選ぶ際には、十分な観察と適切な隔離が重要です。特に混泳に役立ってくれる魚の代表種がパロットファイヤーなので、飼って損はない魚としておすすめします。当店では、パロットファイヤー、マナグエンシス、オスカー、ヴィエジャ、べネスタス、ポリプテルス、プレコ等と混泳させています。
水槽内のレイアウト
- 十分な隠れ家を提供し、視線を遮ることでストレスを軽減します。縄張り意識の強い魚種なので、隠れ家の配置が重要です。パワーバランスが取れにくい場合の1つの方法として、障害物を沢山入れる方法もあります。
パラティラピア・ポレニーの病気対策
一般的な病気
- パラティラピア・ポレニーは丈夫な魚ですが、環境の変化やストレスで病気にかかることもあります。一般的な病気には白点病やヒレ腐れなどがありますが、パラティアピア・ポレニーの場合は、魚同士のケンカやイジメによる傷が悪化して死んでしまうケースが多いので注意しましょう。
予防と治療
- 水質管理: 定期的な水換えとフィルターの清掃を行い、水質を常に良好に保つことが病気予防の基本です。
- 観察: 毎日の観察を怠らず、異変を早期に発見することが大切です。ケンカやイジメ、病気の兆候が見られたら、すぐに隔離して適切な治療を行います。対処は明日でも大丈夫だろうと軽く考えていると手遅れになるので、気が付いたらすぐに対処してください。
- 治療薬: 市販の魚用治療薬を使用し、指示に従って治療します。販売だけではなく、ブリーディングもしているプロがいるお店に相談することをおすすめします。
マダガスカルの宝石に魅了される
パラティラピア・ポレニーは、その美しさと魅力的な行動で多くのアクアリウム愛好家を魅了しています。
マダガスカル島という閉鎖的な環境ゆえ、特異な生態系のなかで独自の進化を遂げてきたであろうパラティラピア・ポレニー。
黒い体色に青白い点々を散りばめたその体は、まるで夜空か宇宙のようです。
その青白い点々の具合にも個体差があり、何回でも飼いたくなる気持ちにさせてくれます。
適切な飼育環境と注意深い管理で、健康で美しい個体を育てることができるでしょう。
ぜひ「マダガスカルの宝石」に相応しい、この美しい魚の飼育に挑戦してみてください。
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