キングロイヤルペコルティア(学名:Hypancistrus sp.)、通称キンペコは、エキゾチックな熱帯魚の一種で、その独特で美しい模様と穏やかな性格で、アクアリウム愛好者たちの心をつかんでいます。
本記事では、専門的なアドバイスと効果的な手順に焦点を当てて、キングロイヤルペコルティアの飼育、繁殖、病気対策、他種との混泳について紹介します。
外観的な特徴
キングロイヤルペコルティアはプレコですが、黒と白の独特のストライプ模様が特徴的な淡水熱帯魚です。
なかには、黄色味がかった白地と黒のストライプ模様の個体もいます。
成長に伴い、その色模様も変化するのですが、成魚になると、その美しい模様が一層際立ち、水槽内での存在感を放ちます。
また、頭部には大きなヒゲがあり、これらが彼らの個性的な外観を形成しています。
分布域と自然下での生態
キングロイヤルペコルティアは、主に南米のアマゾン川流域に生息しています。
自然下では、岩や流木の隙間に潜んで生活し、底生性の生態を営んでいます。
夜行性であり、昼間は穏やかに過ごし、夜になると活動的になります。
自然下でもインペリアルゼブラプレコと生息域が重なっているエリアでは、交雑個体と思われる個体が見つかることもあり、それらはスーパーインペリアルゼブラプレコと呼ばれ、とても高価な値段で取引されています。
飼育環境の設備
キングロイヤルペコルティアの飼育環境を整えることは、彼らが美しく健康で過ごすための重要な要素です。
以下に、適切な水槽のセッティングや環境整備について解説します。
水槽サイズ
キングロイヤルペコルティアは、中型の水槽が適しています。
小さくない水槽、底砂、流木、岩、そしてプレコハウスの配置は、飼育者がこの魚を快適に育てるための鍵です。
ちなみに日本では、管理重視の飼い方であるベアタンク飼育(底砂を敷かない飼育方法)が多いです。
最低でも60センチ以上(約60ℓ)の水槽を用意し、彼らが十分なスペースで泳げるように配慮しましょう。
勿論、30キューブ水槽(約27ℓ)での飼育・繁殖もできますが、できるだけ十分なスペースがあれば、水質管理も楽になり、ストレスの少ない環境を提供できます。
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水質管理
彼らは清澄な水質を好むため、週に2回以上(1回の換水量は、全体の3分の1程度で大丈夫)の水換えが推奨されます。
pH6.5~7.5程度を維持することで、キングロイヤルペコルティアは健康で活発な生活を送ります。
ですが、水質的にpHが低くならなければ(例えばpH6.0以下)、週に2回も水換えしなくても大丈夫です。
最適な水質を作るために、各カルキ抜きや毒物除去剤から、目的に合ったものを選びましょう。
最強濾過バクテリアや、最強PSBなども以下のリンクから関連記事をご覧ください。
例えば、私のところでは60ワイド水槽(100ℓ程度の水槽)に、種親が10~15匹程度、あとはその時々で産まれた幼魚や若魚のキングロイヤルペコルティアが数十匹いるような環境で上記のような水換えをしていますが、サボった時なんかは1週間に1回、又は2週間に1回の水換えの時もあります。
ただ、このように水換えスパンを長くとった場合、気をつけるのは水質の他に、フィルター吸水口のスポンジの目詰まりです。
モーターで水を循環させるタイプのフィルターを使用している場合、稚魚の吸い込み防止のために、フィルター吸い込み口にスポンジを付けますが、水換えをしていない間にスポンジが目詰まりを起こして水の循環が悪くなることで、死ぬ個体が出ることがあります。
定期的な水質検査と必要に応じた調整が健康を維持する鍵です。
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水槽の装飾
キングロイヤルペコルティアは隠れ家が好きなため、水槽内には岩や流木、特に穴のある装飾品を配置しましょう。
これにより、ストレスを軽減し、自然な行動を観察することができます。
プレコは狭い場所に隠れる習性がありますし、流木の表面を齧る食性もあるので、これらの設置は基本です。
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底砂とフィルター
底砂は敷いても敷かなくても構いません。
底砂を敷く敷かない、どちらにもメリット・デメリットがあるので、ご自身の飼育スタイルに合わせて選択すると良いです。
各々のメリットとしては、掃除・管理をしやすくするのはベアタンク飼育(底砂を敷かない飼育法)ですし、生物濾過によって、より濾過が効くようにするとか水質安定を期待する、より自然な環境でリラックスしてもらう等を期待するなら、底砂を敷く飼育法にします。
各々のデメリットとしては、ベアタンクだと底砂がある水槽より水質が不安定になりやすいことですし、底砂がある水槽だと、底砂掃除が間に合わないと底砂自体が汚れの発生源になるということです。
フィルターは適切なものを設置して水質をクリーンに保ちます。
特にキングロイヤルペコルティアは底生性の魚なので、水槽内が綺麗な状態を保つことが重要です。
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照明
キングロイヤルペコルティアはあまり強い光を好まないため、照明は控えめにしましょう。
夜行性の傾向があるため、昼夜のリズムに合った照明を設定すると良いでしょう。
照明は規則正しい照射がとても大事になります。
自分で規則正しい点灯・消灯ができない場合は、タイマー管理にしましょう。
照射時間は、1日8~12時間くらいにします。
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温度調整
ヒーターを使用して水温を一定に保つことが大切です。
彼らは温暖な水温を好みますが、急激な温度変化は避け、ストレスを与えないよう心がけましょう。
水温の高低でもメリット・デメリットがあるため、それを理解して温度設定しましょう。
水温は25〜30℃程度を保ち、中性前後の水質を維持します。
当店では水温28℃で管理していて、pHは未測定ですが、中性から弱アルカリ性なのは間違いないと思います。
おすすめは28℃です。
水流
水流がある方が彼らに適しています。
ただし、強すぎる水流はストレスの原因となりますので、適切なフィルターを選び、水流をコントロールすることが必要です。
外部式フィルターを使用する場合は、デュフューザーを接続することをおすすめします。
十分なエアレーションがキングロイヤルペコルティアなどのプレコには、とても大事になります。
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適切な栄養とバランスの取れた食事
キングロイヤルペコルティアは雑食性であり、多様な食材を組み合わせたバランスの取れた食事が必要です。
主食には、一般的には冷凍赤虫や、ドライフードで栄養バランスを保つことが大切です。
過剰な餌の与え過ぎには注意しましょう。
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繁殖の舞台裏
キングロイヤルペコルティアの繁殖は特に興味深い瞬間です。
ペアリング、卵の受精など、この独特な繁殖行動は特徴的です。
プレコハウスの設置が繁殖成功の鍵となります。
これらのステップを追うことで、飼育者はプレコの神秘的な繁殖を経験することができます。
雄個体がプレコハウスに入って、尾ビレをユラユラさせて雌個体にアピールします。
その気になった雌個体はプレコハウスに近付いて様子を見ることが続きます。
いよいよ繁殖となると狭いプレコハウスの中に雌雄2匹で入って、産卵行動が行われます。
産卵が終われば雌個体はプレコハウスの外に出てきますが、プレコハウスの中から出てくることができずに雄個体に舐め殺されるケースもあります。
産み落とされた卵は雄個体が世話をし、孵化した稚魚も引き続き雄個体が守ります。
ヨークサック(栄養袋)が完全に吸収されて稚魚が独り立ちできるようになると、稚魚はプレコハウスの中から出て水槽内で生活するようになり、雄親の世話も終了します。
ちなみに、この卵やヨークサック付きの稚魚がプレコハウスの外に出た場合、それは雄親が卵や稚魚の育成をしていないことをあらわすので、繁殖失敗になります。
そのままでは卵や稚魚が他の個体に食べられてしまうので、死なせたくない場合は産卵箱などに隔離して人工孵化など世話をすると良いです。
プレコハウスの中で繁殖する特性上、飼育者がキングロイヤルペコルティアの繁殖に気がつかないケースも多く、稚魚が独り立ちして水槽内にいることを発見して、初めて気がつくことも多いです。
キングロイヤルペコルティアの繁殖は難しくありません。
栄養をしっかり取った成魚さえ育成できれば、または入手できれば、あとは雌雄さえそろっていれば、すぐに繁殖してくれるケースも多いです。
お店でとても状態良くキープされているキングロイヤルペコルティアを入手したかたは、購入してすぐに繁殖成功したかたも多いかもしれませんが、そのおかげで繁殖がとても簡単に感じたかたもいると思います。
そんな個体を入手できる信頼のおけるお店を見つけることも、繁殖成功への近道です。
こちらでもキングロイヤルペコルティアを購入することができます
病気の予防と水質管理
キングロイヤルペコルティアの健康状態を維持するには、病気予防と水質管理が欠かせません。
白点病や水質悪化に対する対策を理解し、定期的な水換えやフィルターメンテナンスを行いましょう。
白点病予防も兼ねて、水温を28℃で管理することをおすすめします。
また、新たな魚を導入する際は、隔離して様子を見ることが、病気予防の観点から重要です。
1匹の魚を迎え入れたがために、それまで飼育していた魚が病気にかかって全滅してしまうことも少なくないからです。
プレコは魚病薬に弱いので、投薬の場合は規定量の3分の1にしておくのが安全です。
多くても、規定量の半分までとしましょう。
魚病薬や病気治療については下記の関連記事をご覧ください。
他種との混泳の注意点
キングロイヤルペコルティアはおおむね大人しい性格を持っていますが、同じプレコ種や同程度の大きさの中型熱帯魚との混泳が適しています。
混泳する際は、各魚の性格や水槽の広さを考慮し、ストレスのないように工夫します。
このサイトで言えば、ディスカスとの混泳もできます。
キングロイヤルペコルティアのようなプレコは、混泳させやすい魚の1つですね。
水草をレイアウトするのは自由ですが、やわらかい水草はプレコになぎ倒されやすいですし、硬い葉を持つ水草はプレコが踏ん張りがきくため食べられ易い特徴があります。
プレコの餌の補助がわりとして割り切って、アヌビアスの仲間のような硬い葉を持つ水草を入れるのも、キングロイヤルペコルティアの稚魚育成の助けにはなります。
稚魚は幼い時ほど餓死しやすいので、水草を利用するのもおすすめです。
まとめ
キングロイヤルペコルティアの飼育・繁殖・病気・混泳に関する専門的なアドバイスを理解することで、飼育に対する不安も無くなり、それどころか繁殖もできるようになるでしょう。
これらのステップを実践することで、美しいキングロイヤルペコルティアとの共生がより一層楽しくなりますよ。
繁殖ができるようになったら、次のステップは改良を目標にするのも良いです。
自分が思い描くキングロイヤルペコルティアを作出したり、巷に流通する高額な改良種を自分で作出することを目指す、なんていうのも遊び方の1つです。
繁殖には無限の面白さという魅力がありますね。
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