フラワーホーンはその美しい色彩と独特の行動で熱帯魚愛好者に愛されています。
この記事では、フラワーホーンの飼育から繁殖、適切な設備環境の整備、病気について、そして混泳について徹底解説します。
素晴らしいアクアリウム環境を築くための全てのポイントを網羅しました。
フラワーホーンとは
元々の始まりは、フラミンゴシクリッド(学名: Amphilophus citrinellus)と、トリマクラータス(学名: Amphilophus trimaculatus)を交雑させたものだと言われています。
それから、色々なシクリッドが交配されて、現在の色々なフラワーホーン(花羅漢)が存在します。
最大全長はオスカーと同じくらい、30㎝程度ですが、現在では初期に比べて個体サイズも小型化しているようにも感じられ、性格も大人しめの個体も多くなったように感じます。
寿命は5年程度です。
飼育方法の基本
1. 適切な水槽環境の構築
フラワーホーンの飼育には、安定した水温、適切なフィルターの使用、水草や隠れ家の配置が不可欠です。水槽環境の構築について詳しく解説します。
水温や水質
水温は28℃がおすすめです。
水質は、pH値はこだわらなくても大丈夫です。
ただ、大きくなる魚は水を汚しやすい結果、低pHになりやすいので、そうならないように水換え頻度を多めにするなり、低pHの原因物質を取り除く商品を使うなりして、pHが下がり過ぎないようにしましょう。
pH値が下がりにくいよう誤魔化す、サンゴ砂や牡蠣殻の使用もかまいませんが、誤魔化している裏では硝酸塩などの酸化物質は溜まっていく一方なので、あまりこれらには頼らないようにしましょう。
最適な水質を作るために、各カルキ抜きや毒物除去剤から、目的に合ったものを選びましょう。
最強濾過バクテリアや、最強PSBなども以下のリンクから関連記事をご覧ください。
水槽設備
水槽サイズは、60規格(約60ℓ)水槽から飼育可能ですが、できることなら60ワイド(約100ℓ)水槽以上の大きさがある水槽がおすすめです。
ちなみに私の実際では、60ワイド水槽が基本です。
小さなペアであれば45サイコロ水槽(45×45×45・約80~90ℓ)を半分にセパレートした状態の狭い環境でも繁殖できていますが、稚魚育成まで考えればそのスペースでは足りないので、いずれ遅くない段階でセパレートは取り外さないとなりません。
水量に見合った適切なヒーター、または少し余裕のある容量のワット数のヒーターを選びましょう。
この際ヒーターは、病気に対処をできるようにするため、サーモスタットで34℃くらいまでコントロールできるものにしましょう。
照明はお好きなものを選んでかまいませんが、フラワーホーンが綺麗に見栄えのするようなもの(赤・青・白などの光があるもの)が良いかもしれないですね。
フィルターも何でも構いませんが、一般的には上部式フィルターや外部式フィルターを設置することがほとんどでしょう。
上部式フィルターなどの吸い込み口のパイプがフラワーホーンによって外されてしまう場合は、パイプ部分を耐圧ホースに付け替えると良いです。
耐圧ホースの太さ(径)は、普通の水道に使う太さの物を選べば大丈夫です。
2. バランスの取れた食事
飼育においては、バランスの取れた食事が重要です。
適切な種類の餌と与えるタイミングについて説明し、フラワーホーンの健康をサポートする方法を紹介します。
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ドライフード
販売されているサイズのフラワーホーンを考えると、一番小さな個体でもドライフードがメインになります。
ドライフードは粉ものの餌になるので、一番ポピュラーな餌ではあるものの消化不良を起こしやすい餌であるとも言えます。
そのため、なるべく質の良い餌を与えることが最良です。
コスパの面から大型魚に鯉の餌を与えるかたもいますが、あまりおすすめはしないので、どうせ鯉や金魚の餌を与える場合は、なるべく品質の良いもの(安くないもの)を与えた方がいいです。
勿論それよりは、ちゃんと熱帯魚用の餌がおすすめです。
裏技的なものをいえば、海水魚の餌はどんな魚に与えても良い餌だと言えます。
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冷凍餌
販売される一番小さいフラワーホーンには、冷凍赤虫も与えると消化的に良いです。
もちろん、フラワーホーンが大きくなってきても冷凍赤虫を併用できるなら、それは良いことです。
冷凍ディスカスハンバーグもフラワーホーンの大好物で、体を大きくするのに役立ちます。
他の冷凍餌も色々と与えて、メニューがバラエティ豊かになることは、とても良いことです。
繁殖と子育てのポイント
1. 繁殖のサインと準備
繁殖期に入る前に、オスとメスの識別や適切な繁殖水槽の準備が必要です。
産卵から孵化までのプロセスについて詳しく解説します。
雌雄判別
複数の水槽を持っていて、複数のフラワーホーンを飼育できる方であれば、いずれ判別ができるようになるかもしれませんが、多くのかたは1匹だけの飼育が多いのではないかと思います。
その場合は、仮に雌であれば、日頃から十分な餌を与えられて栄養状況が良ければ、いずれ産卵行動をとるようになって、雌であることに気がつくこともあります。
基本的には、フラワーホーンは雄の方がコブも体も大きくなりやすく、雌の方がコブも体も小さいです。
フラワー模様(体側や背部に入る黒い模様)が目立つ個体は雌に多いです。
肛門を見れば、雄の輸精管は小さく目立ちにくいですが、雌の輸卵管は太く目立ちます。
ペアリング
気の荒いシクリッドはここからが難しくなります。
雌が一方的に攻撃を受けて死ぬことに気をつけなければならないからです。
命がけのペアリングになるので、基本的には透明なタイプのセパレーターを使ってお見合い状態にさせることをおすすめします。
反応を見て2匹を一緒にしますが、一方的な強弱関係になるようであれば、またセパレートしてやり直します。
雌が産気づいてきたタイミングで雄と一緒にすれば、上手くいきやすいです。
産卵
管理を考えるとフラワーホーン飼育はベアタンクがおすすめですが、ベアタンクの場合は何も無ければ水槽底面に産卵します。
あるいは、大きめのなるべく平らな石を入れておけば、その石に産んでくれたりもします。
フラワーホーンはシクリッドなので通常なら子育てをしますが、食卵や食仔のリスクもあります。
食卵や食仔を防ぐには人工孵化をしますが、人工孵化の場合は卵がカビやすいので、そこが難しいポイントになります。
卵のすぐそばにエアレーションをしますが、稚魚が飛ばされないよう孵化間近になったらエアレーションを弱めた方が良いです。
水カビ防止で、アグテンなどのマラカイトグリーン水溶液の使用も良いです。
2. 仔魚の育成
仔魚の育成には適切な餌と安全な遊泳スペースが必要です。
子育てのポイントや注意事項について細かく解説します。
稚魚の育成
28℃くらいであれば、産卵から2~3日程度で孵化し、その後また2~3日くらいで自由遊泳を始めます。
自由遊泳を始めたら、稚魚に餌を与えますが、生きたブラインシュリンプベビーが一番ベストな餌です。
生きたブラインシュリンプベビーは、乾燥卵を塩水で24時間程度かけて孵化させなければならないので、フラワーホーンの稚魚の孵化日にあわせてブラインシュリンプベビーを用意するのがベストですが、ブラインシュリンプベビーも長持ちはしません。
ブラインシュリンプベビーは、特に夏は孵化した日に使い切るか、せいぜい次の日には使い切るようにしましょう。
ブラインシュリンプの孵化水の水温が低めであれば孵化までの時間が少しかかりますが、腐りにくくなるぶん、通常より日持ちします。
ブラインシュリンプベビーが死んで腐ってくると、オレンジ色が濁り、臭いもしてわかります。
稚魚が冷凍赤虫やドライフードを食べることができるサイズになってきたら、徐々に餌を切り替えていきましょう。
成長期にある魚は、水換えを頻繁にすることで代謝が促されて成長も早まるので、溜め水を使って安全な水換えを頻繁に行うのがおすすめです。
溜め水を使わずに水道水をカルキ抜きして水換えをする場合は二酸化炭素のリスクが残っているので、1回の水換え量はなるべく少なく、例えば全体の3分の1、多くても半分までとしましょう。
設備環境の整備
1. 水質管理と設備選定
水質管理はフラワーホーンの健康に直結します。
適切なフィルターや水替えのタイミングについて解説し、良好な環境を保つポイントを紹介します。
魚飼育は水量と水換えに尽きる
水質や設備に関しては、すでに簡単にお話しましたが、魚飼育は水量(水槽の大きさ)と、水換えに尽きます。
水量が多ければ多いほど飼育水は汚れません。
基本的にフィルターは、主に餌やフンが原因になって発生する猛毒を、比較的に無害な毒に早くかえてくれる装置なわけで、この毒を水槽から排出するために水換えが必要なわけです。
また、水量が不十分な水槽は水が汚れやすいですが、それをカバーするものとして水換えさえしていれば管理できます。
しかし、水換えにも上手い下手があるので、水換え1つで魚を生かすことも殺すこともできるわけです。
例えば、毎日全換水する水槽もありますが、その場合、安全な水で水換えをしなければ魚が水換えによって死ぬこともあるので、大量換水には必ず溜め水を使います。
もちろん普段の水換えから溜め水を使えれば1番良いことです。
溜め水については以下の記事も参考にしてください。
水換えの手間を軽減したければ、高性能な添加剤やアイテムを使うしかありません。
その1つとして、以下の記事も参考にしてください。
ちなみにこれはディスカスの時によく話すのですが、魚の繁殖は上手く育成ができないうちは数を残せません。
上手くなると、孵化した稚魚をちゃんと育成できるようになって数を残せるようになります。
もちろん、弱い個体や奇形の個体などは死んだりしますが、まずは数を残せるよう練習してください。
次は、数が多いと個々の育成まで上手くできなくて、個体間の育成に差がつくため、個体の粒が(サイズが)そろわなくなります。(※ただし、F2世代では遺伝の関係で個体サイズがそろわないこともあります)
また、数が多いために管理が難しくなり、せっかく多くいた稚魚・幼魚をむしろ駄目にして失敗してしまうパターンもあります。
これが上手くなれば、個体の数を残せるようになり、残せた個体もみな大きくできるようになるのです。
2. 設備の効果的な利用
エアレーションや遊び道具の配置など、設備の効果的な利用方法について詳しく解説します。
フラワーホーンが快適に過ごすための工夫を紹介します。
魚は口を使って遊ぶ
魚は手が無いので、口を手のかわりのようにして使います。
特にシクリッド、フラワーホーンなどは口に物をくわえて動かすことが好きです。
そのせいで、フラワーホーンも成長してくるとパワーがついてくるため、水槽内のヒーターを動かしたり、フィルターの吸い込み口やパイプを外してしまうこともあります。
レイアウトしていたり底砂を敷いている環境では、底砂を口にくわえて移動を繰り返して巣穴のようなものを作ったり、流木などを動かそうとしたりもします。
浮かぶものでも沈むものでも、ボールを入れると口を使って遊んだりもします。
エアレーションは大事
エアレーションは魚のためだけではなく、むしろ良い水を保つためにとても大事です。
水槽内にいる(主にフィルターの濾材にいる)濾過バクテリアが酸素を使うので、この濾過バクテリアのためにもエアレーションは大事なのです。
強いエアレーションを設置した環境では水の良さが大違いですよ。
ただ、エアレーションを設置する場所や深さには気をつかいましょう。
エアレーションを設置したポイントが深い場所であればあるほど、水槽内に水流ができます。
その水流が今の環境や魚種に不適当であった場合、水流を弱めたければ、エアレーションの設置ポイントを水面方向に浅くしていって、ほど良いポイントを見つけるといいです。
このエアレーションによる水流を利用して、自分が意図する場所にフンが集まってくるようにして、掃除をしやすくこともできるので、気になるかたは試してみてください。
病気の予防と対処法
1.餌を食べなくなる
フラワーホーンは内臓が弱いのか、腹部寄生虫が多いのかわかりませんが、内臓系と思われる病気になりやすく、これが死んでしまう原因としても多いです。
そのため、予防的な措置と水質管理が重要です。
一般的な病気への対処法や専門家のアドバイスについても解説します。
拒食症
フラワーホーンで多いのが拒食症です。
フラワーホーンが作出されて、世に流通した当時の初期のフラワーホーンからある特徴です。
拒食の原因が混泳魚によるパワーバランスにある場合は、フラワーホーンが弱い立場になってイジメられているケースがあるので、相手の魚かフラワーホーンを隔離する必要があります。
または、超過密飼育になるくらい匹数を増やすことですが、こちらは一般のかたの水槽では現実的な対処法ではありません。
何にせよ、このようになったフラワーホーンは餌に対して反応が悪くなっていることが多いので、どちらかを隔離してもいつもの餌を食べないことがあります。
その場合は、冷凍赤虫を与えてみるなど、食いの良いとされる他の餌を試してください。
生き餌も1つの方法です。
また、食が細くなった魚は、より小さな餌を選んで食べる傾向にあるので覚えておいてください。
一方で、単独飼育でも拒食症になることが多い魚がフラワーホーンです。
予防としては、常日頃から消化の良さを考えた餌を与えるとか、水換え不足で水質が低pHにならないようにするとか、水温と餌の質や量の関係を忘れないなどです。
低めの水温で飼育もできますが、水温が低い環境では魚も消化する力が落ちるので、量を食べさせないように注意が必要です。
拒食症の対処法としては、28℃飼育だったところをまずは32℃にして餌を与えながら様子を見ます。
4日目になっても食べる様子が見られなければ、33℃にして同じように餌を与えながら様子を見ます。
回復する時は、32℃の段階で食欲が回復しますが、最終的にはダメなら34℃にするので、いきなり34℃にするのも方法です。
対処が遅れると、徐々に水温を上げて試してる余裕はありませんし、ディスカスの拒食症の場合はいきなる34℃にするので。
とにかく、拒食症になったら対処を早くしないと、高温治療に対する体力も無くなるので、3日食べないとなったら何かあると思って、原因を探るようにしましょう。
病気がわかれば、それに対する薬浴なり何なりしましょう。
原因がわからないのが、今話している拒食症なので、高温治療をしましょう。
2. 専門家の診断と飼育者の経験談
疑わしい症状が見られる場合は、専門家の診断と飼育者の経験談を参考にするのも良いです。
異常に早く気づき、正確な対処法を学ぶポイントを紹介します。
相談する時の説明
全ての魚に共通することですが、魚が不調になった時などに専門家に相談する場合は、飼育環境をなるべく詳しく説明しましょう。
専門家の方から聞かれるとは思います。
- 水槽サイズ(水量)
- 水温(わかるようならpH値も)
- フィルターの種類
- 照明の有無
- エアレーションの有無
- 魚のメンバーやサイズや匹数
- 水換えに使う水はどのような水か(例えば水道水をカルキ抜き、例えば溜め水など)
- 水換え頻度や量はどれくらいか
など、このような感じで相談すれば、あとは更に詳しく聞きたいことを聞かれると思うので、答えるようにすると良いです。
魚病薬や病気治療については下記の関連記事をご覧ください。
混泳について
1. 適切な仲間の選定
フラワーホーンは単独飼育が基本です。
ですが、昨今のフラワーホーンには、昔に比べて性格がおとなしめの個体も見られるようにはなっていて、以前よりは混泳がしやすくはなっています。
幼魚の頃であれば混泳もしやすいのですが、フラワーホーンに限らずシクリッドの混泳はパワーバランスが全てです。
パワーバランスを取るために、基本になるのは過密飼育、超過密飼育です。
しかしこれは、自分で繁殖でもさせない限り、一般のかたでは匹数を揃えるのは難しいところがあります。
とはいえ、マニアの中には色々な大型魚と混泳成功をさせているかたもいますし、たまたま優しい性格のフラワーホーンにあたるかたもいて、少ない匹数で混泳に成功するケースも現在はあります。
水槽が複数あれば魚のメンバーの入れ替えも自由にできるので、パワーバランスを計るには、できればこのような環境が望ましいですね。
繁殖・育成の一例
当店でのフラワーホーンの繁殖の一例です。
ここまで載せたフラワーホーンのペア、火麒麟(赤っぽい個体)の雄と、フライングドラゴン(青っぽい個体)の雌を交配させた例です。
この時点のペアは若いので、体のサイズも小さく、コブも小さいです。
それに、魚の将来の出来栄えは稚魚からの育成で決まるので、お店に入荷する前までの育成でその個体の素質が開花される育成をされていなければ、自分の育成で素質を伸ばすには制限がかかってしまい、要するにいくら頑張って育てても素質を開花させることはできません。
その証明として、以下の当店産のフラワーホーンを見てください。
育ちの良いものや、見た目の良いものをピックアップしたわけではなく、残り物の個体だから成魚になるまで追うことができたというだけです。
上の写真の個体はこの時点では雄かなと思っていたのですが、結果的には雌ということが判明し、下の写真のように育ちました。
次の写真の個体は、性別は確定しないままでしたが、雄個体で間違いないと思います。
上の写真の個体が、下の写真のように育ちました。
更に、フラワーホーンは体調でもコブの大きさが変化します。
下の写真は同じ個体です。
この雄らしき個体は、この記事の一番最初に載せた写真の個体と同じ個体です。
フラワーホーンに限らない話ですが、稚魚期からの育成をいかに上手くできるかで、その魚の将来が決まります。
稚魚期からしっかりと管理・育成された幼魚を入手できれば、あとは良い魚に仕上がってくれやすくなるわけです。
また、稚魚期からの管理・育成があまり良くなかったとしても、なるべく早い段階で入手し、自分でしっかりと管理・育成をすれば、カバーすることは可能です。
この例でわかるように、見た目では判断できないのです。
私が仕入れた個体はまだ若いとはいうものの、仕入れた時点である程度の年齢になっていた個体で、見た目では良い個体に育ちませんでしたが、それは素質を開花させることができていなかっただけで、自分で産卵させるところからスタートして、稚魚から育成して素質を開花できれば、親魚よりも立派な個体を当たり前に得ることができるのです。
写真の当店産F1雌個体は、当店に戻ってきて雌だと判明する直前までは、当時中学2年生か3年生が育成していました。
写真の当店F1雄個体は、当時小学6年生か中学1年生が育成していました。
2人とも、当店産の幼魚から立派なフラワーホーンに育てることができたのです。
まとめ
このガイドを参考にして、あなたの水槽でフラワーホーンを飼育し、繁殖させ、健康を保ち、他の魚たちと共存するための知識を身につけましょう。
知識や技術は流用できるので、他の魚の飼育・繁殖にもお役立てください。
ペットフィッシュとして最高のフラワーホーンを、ぜひ飼育してみてください。
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